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【患者術に学ぶ】 「私の患者術10か条」を読んで考えたこと (前編)

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今回は、ある新聞記者の方が、がんを発症した時に作った『私の患者術十か条』を紹介します。

厳しい闘病を耐え抜いて来られたためか、筆者の強い思いが感じられる患者術です。

記者らしい深いものの見方を感じさせる一方、読むものにとって分かりやすく、価値ある良質の患者術です。

この十か条を手本に、あなたオリジナルの 十か条を作ってみてはいかがでしょうか。でもその前に、当記事にちょっと目を通してみて下さい!

 

※引用した書籍は、筆者が闘病中に執筆し、新聞紙上にて連載されたものです。

「引用元:井上平三(2002)『私のがん患者術』岩波書店(38-58項)」

 

今回は前篇として、十か条のうちの1~5か条を採り上げました。

 

 目次

 

第一条 ≪人生観を変えて治療にのぞむ≫ 

 筆者によると、がんになったことで人生の先行きが不透明となり、以前から描いていた計画や見通しにこだわっていては、しんどくなるばかりであると。そのため、今日、明日ぐらいの見通しに留めて、「それより先は考えない」と開き直りを決めたところ、それ以来気持ちがずっと楽になったとのこと。

 ☆私の感想☆

 確かに、病前の計画、見通しにいつまでもこだわっていたら、当初描いてた夢に望みを抱くどころか、気持ちが押しつぶされてしまいます。それよりも、今までの想定通りにはいかなくなったことを早くに自覚し、今日やることだけに集中した方が、日々を過ごしやすくなるでしょう。足元を見つめながら、スモールステップで一歩ずつです。でも、以前からの夢も諦めてしまうのでなく、一旦、心のどこかに保留しておいて、時期が来たら再び向き合うのが最良かと私は考えます。

 

第二条 ≪がんを告知されたら再発を覚悟する≫ 

筆者は、がんの告知を受けた時の衝撃は今も忘れられないと。でも、その衝撃をずっと上回ったのが、再発が分かった時であったと言います。一方、「覚悟」をするなら衝撃は和らげられると言います。そうするなら、冷静に事実を見つめてその後の治療にのぞめると。この考え方について、最初から再発の覚悟をするのは厳しいぞ、と読者に取られることを心配もします。しかし、いつでも、うまくいかなかった時を予め想定する心の準備が大事だと筆者は言います。

☆私の感想☆

筆者自身も、再発の覚悟について、厳しい言いようだと言っています。そうですね。告知後まもなく再発の覚悟をするのは、ちょっと辛いです。最初の治療が済んだら、当面はホッとしていたいものです。ただ、覚悟を特にしていなくても、再発という緊急事態に備える用意は、誰でも心のどこかでやっているような気もします。でも、一旦忘れ去ってしまうことが一番だとする方も、決して少なくないでしょう。

 

第三条 ≪気持ちのコントロール術を覚える≫ 

揺れ動く気持ちを落ち着かせるためのコントロール術を覚えること、と口で言うのは簡単ですが、いざとなると思うようにはいかないものです、と何度も手術を重ねた筆者は言います。秘訣としては、緊張(手術の時など特に)の中にも笑いを探すことだと。そして筆者は、最後にはやはり場数がものを言うのだとも付け加えています。

☆私の感想☆

笑いは、あらゆる患者にとって、最良の天然ワクチンかも知れません。実際、笑いは免疫機能を高める効果があるのだと聞きます。また、フランスの哲学者アランいわく、幸せだから笑うのではない、笑うから幸せなのだと。将来、笑いの効果が、科学的に裏付けられるかも知れません。

 

第四条 ≪医師と医療を過信しない≫ 

筆者が言うには、「私に任せておけば大丈夫」という自信たっぷりな医師よりも、どちらかと言えば少し頼りないタイプの方が親しみが持てるようだと。それは、単純に好悪の問題ではないようです。医師に全てを任せてしまうと、症状がなかなか良くならない時には、不信感だけが募り、結局は、腹を立ててしまって医師との間に溝が生じることになるのだと。良い治療は、医師と患者の共同作業がカギとなるため、少々頼りないくらいの医師の方が良い関係を築きやすい、と筆者は言います。

☆私の感想☆

つい、病気を恐れるあまり、医師に全てを任せてしまう方もおられるのでは。確かにそれも一つのやり方かも知れません。特に馴染みの医師であったなら。でも、重い病気のために遠くの大学病院などに行くことになって、初対面の医師との関わりが始まる時、患者と医師との共同作業であることを、しっかり頭に入れておくことが大切だという筆者の意見には、私も賛成です。

 

第五条 ≪痛みや苦しみは大げさに伝える≫ 

がん患者にとって最も難しいのは、肉体的な「痛み」や、他のさまざまな「苦痛」の程度を医師と看護師に伝えることだ、と筆者は言います。そこで、「痛みや苦しみは大げさに伝える」ことを筆者は信条にしてきたと。なぜなら、懸命に患者と向き合い、治療を手伝ってくれる医師も看護師も、痛みをきっちりと受けとめることはできないだろう、と筆者は言います。それゆえ、痛みを分かってもらうために、人一倍大げさに伝えることを学んだのだと。

☆私の感想☆

予てより、私も筆者同様、痛みの伝え方は悩みの種でした。血圧計みたいな形をした痛み伝達装置があったら良いのにと、入院中によく思いました。この装置を使うと、患者から看護師さんに痛みがダイレクトに伝わるというものです。この仮想装置の話を、入院中、よく看護師さんにしては笑われてました。痛みの度合いを正確に医療スタッフに伝えるというのは、実際難しいです。しかし、正確に痛みを伝えることはとても大切なことです。薬の処方に関係したり、場合によっては治療方針にも影響を及ぼすものだからです。

 

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まとめ

いかがでしたでしょうか。さすが筆者の職が新聞記者だけあって、本編となる書籍ではより濃く、厚みのある内容になっています。しかし、十か条はそれら本文をしっかり集約したものとなっています。この条文を手掛かりに、闘病中の方ご自身が十か条を作ってみてはいかがでしょう。

次回は、後編として6条から10条を採り上げたいと思います。