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闘病する人の心に効く言葉 ― ビクトール・フランクル 人生からの問いかけに応える生き方 ―

こんにちは、ジョニージョニーです。今回は、『夜と霧』の作者として知られるビクトール・フランクルの言葉を採り上げます。以前も一度、フランクルの言葉を記事にしましたが、さらに深掘りします

この記事を読むと、闘病することの意味を考える上での手がかりが得られます。第二次世界大戦時、ドイツ強制収容所に捕われながらも生き抜いたフランクル。彼の言葉には、強い説得力と真実性が備わっています。

本文では、フランクルの言葉から「人生からの問いかけ」について、明治大学教授・諸富祥彦さんの著書『ビクトール・フランクル 絶望の果てに光がある』を参照しながら考えます。

 

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  もくじ

 

◇  ビクトール・フランクルの紹介

1905年オーストリア生まれのユダヤ人。フランクルは「生きる意味とは何か」を求めて精神科医(心理学者)になります。やがて独自の心理療法ロゴセラピー」を確立。フランクルは「人生に絶望した人間が生きる意味と希望をとり戻すこと」への援助に、その生涯を捧げました。

主な著書(邦訳書)に『夜と霧』『死と愛』『それでも人生にイエスと言う』『苦悩する人間』があります。1997年永眠。

 

◇ 人生からの問いかけに応える生き方

 先ずは、下記のフランクルの言葉をお読みください。

人間が人生の意味は何かと問う前に、人生のほうが人間に問いを発してきている。だから人間は、本当は生きる意味を問い求める必要はないのである。人間は、人生から問われている存在である。人間は生きる意味を求めて問いを発するのではなく、人生からの問いに答えなくてはならない。そして、その答えは人生からの具体的な問いかけに対する具体的な答えでなくてはならない。

☆ 意 見 ☆

諸富先生は、「人間が『自分はどう生きるか』と人生に問いかけるのに先立って、人生の方からの問いかけ、呼びかけが、常に既に届いてきている。そして、それに答えることが何よりも優先するのだ」とフランクルの言葉を説明しています。

人生からの問いかけを具体的に知るには、問われる側の生きている状況を読み解くことが必要です。つまり、問われる側が闘病する人であるなら、フランクルの言葉「人生からの問いかけ」の対象は、闘病生活そのものになると、私は考えます。

闘病する人は、人生から「病のさなかにあるあなた。あなたは一体どのように生きるのですか?」と問われるのです。病状がさまざまな経過を辿る中(人生からの具体的な問いかけ)、闘病する者がその都度、どのような態度をとるのか(具体的な答え)、人生に対して応えるわけです。

人生からの問いかけに対して、闘病する者は具体的な答えを返していきます、人生にフランクルによると、その具体的な答えにこそ、人生の意味があるというのです。

諸富先生は言います。「自分の幸福を求めて、自分がしたいこと、やりたいことをするのが人生だ」という人生観から、

自分が人生からの問いかけに答えること。つまり、「自分がこの世に生まれてきたことの意味と使命とを全うしていくのが人生だ」という人生観へと、根本的な生き方の転換をフランクルは求めているのだと。

闘病する者が人生から問われるなら、闘病する者は、たとえ辛くきつい闘病であっても、病とどう向き合うかを人生から問われているのだと理解し、そこに人生の意味を見出す時、「なすべきときに、なすべきところで、なるべきことをしている」という深い生きる意味の感覚が得られるのだと、フランクルは説くのです。

辛い闘病生活を送った後、なんとか安定した状態に持っていけた時、闘病前と後とでは、世界の見え方が違っていた人生への考え方も大きく変化した、という方も決して少なくないでしょう。なぜ見え方、考え方が変わったのか。それは、意識するしないに関わらず、厳しく辛い闘病生活から、正に深い生きる意味を見出したのではないでしょうか。

ここでフランクルの思想の背景を振り返ります。

ナチス強制収容所で、自分の命がいつどうなるかもわからないという状況下、故郷の愛する家族や未完の論文の存在に想いを馳せながら、希望(自分を待っていてくれる人・こと)を持ち続けます。

しかも、ただ単に希望を持ち続けるだけでなく、困難な収容所生活にあって、どのような態度を取るか、苦しい状況をいかに乗り越えるかに意味、価値を見出し、フランクルは収容所の日々を送ったのです。

厳しい強制収容所での『あり方』こそが、フランクルの深い生きる意味の感覚、その源泉となったのです。

 

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「人生からの問いかけに応える生き方」へと根本的な生き方の転換が行われる際、以下の三つの問いが、考え方として重要になってくると諸富先生は説明します。

この人生から私は何をすることを求められているのだろう

私のことを本当に必要としている人は誰だろう。その人はどこにいるのだろう

その誰かや何かのために私にできることは、何があるのだろう

 

上記の三つの問いを絶えず自問自答して生きることで、人生からの問いかけに応える生き方(意味と使命中心の生き方)へと大きく転換していくことになると諸富先生は言います。

上記の三つの問いは、闘病する者にとっても、意味のある問いであると私は考えます。

 

フランクルの教えは、少々厳しすぎると思われる方もおられるでしょう。これについてのフランクルの回答を下記に記します。

苦しみを苦しみぬけ。悩むべき悩みをとことん悩みぬけ。

悩んで、悩んで、悩みぬけ。苦しんで、苦しんで、苦しみぬけ。

その果てにおいてこそ、私たちに真の希望が届けられてくるのだから……

 

諸富先生は以下のように解説します。

フランクルは、安易なボジティブシンキングを否定します。苦悩の意味、苦しみの意味について、フランクルは繰り返し語っています。苦しむべき苦しみを正しく、本気で苦しむことができること。悩むべき悩みを正面から受け止めて、徹底的に悩むことができること。悩み、苦しみに対するこうした姿勢に極めて大きな価値を見出したのが、フランクルの大きな特徴です。

 

◇ 動画による解説

 当記事の理解に役立つ動画を下記に貼りました。解説者(心理カウンセラー)さんの話の主語を、闘病に置き換えて視聴していただけるなら、当記事の理解が進むように思います。

www.youtube.com

 

◇ まとめ

 いかがでしたでしょうか。今回はビクトール・フランクルの思想、「人生からの問いかけに応える生き方」をテーマとして記事にしました。フランクルの考え方に共鳴するところも大いにあります。ただし、安易に取り入れると火傷してしまいそうな思想です。

フランクルは、意味と使命中心の生き方をサポートするものとして、ユーモアの大切さ芸術や自然に感動する心かけがえのない思い出などをあげています。

ユーモアを大切にしながら、意味と使命中心の生き方をするってどんな感じ?と訊きたい方もおられるでしょう。そのような方のために下記に歌の動画を用意しました。こんな感じがいいかと……それでは。

 

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最後までご覧くださり、ありがとうございました。

 

 【引用・参考文献:諸富祥彦『ビクトール・フランクル 絶望の果てに光がある』KKベストセラーズ〈ワニ文庫〉、2014年】